一括処理システム 
無機系廃液の処理
有機系廃液の処理
 廃液処理関連用語の説明



 

T 一括処理システム
 
  大学の教育・研究・医療活動の結果,排出される各種実験廃液等は,一般に多岐多種に及びかつ高濃度であることが特徴である。
  環境安全センターに設置された実験廃液処理装置は,無機系廃液のフェライト化プロセスと,有機系廃液の燃焼プロセスと組み合わせて,これらの廃液を処理する一括システムを採用している。



  分別した実験廃液のうち,有機系廃液は噴霧燃焼プロセスにより処理し,この際排出ガス中の有害物質はアルカリ水(洗煙水)により洗浄除去する。この洗煙水及び前処理プロセスを経た水銀系廃液,シアン系廃液及びフッ素リン酸系廃液は,重金属系廃液と共にフェライト化プロセスにより重金属除去が行われる。それぞれのプロセスの最後に出される排ガス,処理水及びスラッジは排ガスモニタリング装置と水質分析等安全性のチェックを行った後,大気へ放出又は下水道へ放流,搬出する。
  これらの装置の運転は,制御盤室より操作しながら主要装置の作動状況が見渡せるようになっている。


 
U 無機系廃液の処理
 
 1 フェライト化プロセス
   フェライト化プロセスは溶解槽,反応塔を経て磁気分離装置で処理水とスラッジを連続的に固液分離し,処理水は中和槽へ導かれる重金属除去プロセスである。
  溶解槽で添加したFe2+イオン(硫酸第一鉄の形で加える)を反応塔で中和した後,蒸気加熱(約65℃)し,空気吹込みによってその一部をFe3+イオンに酸化し,フェライトと呼ばれる酸化物結晶格子(スピネル)を組み立てる。このとき液中に夾雑する種々の重金属イオンを固溶体の形で,その結晶格子内に取り込むので,この方法を空気酸化フェライト化処理方式と呼んでいる。
  この空気酸化フェライト化処理方式の有利な点は,
    a 多種類の有害重金属を同時に除去できる。
    b 沈降,濾過が容易であり,磁気分離も可能である。
    c 処理剤の硫酸第一鉄は処分に困っている産業廃棄物である。
    d Cr6+やMn7+も特別な前処理無しで処理できる。
    e フェライト沈殿物は吸着作用を有し,重金属以外の物質も同時に除去される。
    f フェライトスラッジの再利用:強磁性であることを利用して,電波吸収体としての利用,磁性捕捉剤としての利用,磁性流体としての応用などが考えられており,一部実用化されている。
  一方,処理上の問題点としては,
    a 水銀は,生成するフェライトの結晶格子に取り込まれず,処理できない。
    b フッ素系廃液のフッ素は除去できず,リン酸系廃液はフェライト化を阻害する。
    c 重金属のフェライト内組み込み処理を基本としているために,シアン分解は別になる。
    d 他の重金属処理でも同様であるが,アンモニウムイオンやEDTAの様な可溶性重金属錯体や可溶性重金属キレートを作るものが多く含まれている廃液では,重金属除去が不十分となることがある。
  こうした点を補い,完全な処理を行うために,本学の空気酸化フェライト化処理方式には,水銀,シアン等を前段階で処理する前処理プロセスが付設されている。
  しかし,廃液の分別が完全でなく,重金属系廃液にこれらフェライト化阻害物質が含まれている場合も想定して中和槽から後段には,活性炭塔,水銀キレート樹脂塔,重金属キレート樹脂塔及び活性アルミナ塔を経て,処理水槽に至る2次処理装置を付け,処理のより一層の完全を期している。
 
 2 水銀廃液前処理プロセス
   水銀廃液前処理プロセスは,水銀廃液受槽より酸化分解槽へ送られ,ここで過マンガン酸カリウムと硫酸による酸化分解を行う。廃液中に混入していた有機水銀化合物(例えばチメロサール,アルキル水銀など)は無機水銀に分解されHg2+イオンとなり,キレート樹脂の水銀吸着能力を阻害する有機物も分解する。さらに,還元剤槽から還元剤を注入し,水銀キレート樹脂塔に通し,水銀を吸着除去しチェック槽に移す。水銀除去をチェックした後一旦重金属廃液受槽に移送し,水銀以外の重金属を除去するフェライト化プロセスに送る。
 
 3 シアン廃液前処理プロセス
   シアン廃液前処理プロセスは,常にアルカリ性(pH10.5以上)に保たれたシアン廃液受槽から所定量を分解槽(水銀酸化分解槽と併用)に移送し,ここで次亜塩素酸ナトリウムによる分解を行う。この反応は極めて危険な反応であるので,pH,ORP(酸化還元電位)を厳密にコントロールして行うことになっている。この処理水も未分解シアンの無いことを確認した後,一旦重金属廃液受槽に移送し,フェライト化プロセスに送る。

 4 フッ素リン酸系廃液前処理プロセス
   フッ素リン酸系廃液は,大型ポリ容器中でバッジ処理する。廃液は塩化カルシウムによる石灰化反応で不溶性のフッ化カルシウム,リン酸カルシウムとして,Fイオン,PO3−イオンを沈殿固定する。処理水は重金属廃液受槽に移送し,フェライト化プロセスに送る。


 
V 有機系廃液の処理
 
  有機系廃液は噴霧燃焼プロセスにより処理する。
  噴霧燃焼プロセスは噴霧焼却炉と燃焼ガス洗浄装置を中心としたプロセスである。噴霧焼却炉は廃油,廃溶剤焼却処理用に設計された堅型炉で,炉側部にロータリーバーナーを備え,可燃性高発熱量の有機系廃液を一次空気と共に炉内に噴霧し,また,炉頂部にロータリーアトマイザーを備え難燃性低発熱量の有機系廃液を,一次空気と共に炉内に噴霧し焼却できるようになっている。ロータリーバーナーから噴出する火炎は,炉内をタンジェルシャルに回りながら下降する間に,この難燃性低発熱量の有機系廃液を完全に分解する。この焼却炉のパイロットバーナー助燃には灯油が用いられている。
  ロータリーバーナーとロータリーアトマイザーの特徴は,噴霧口が大きく「詰り」の心配が少ないことで,廃油,廃溶剤の発熱量,粘度流量などの変動に対応する霧化能力の幅を広く設計できることである。
  また,炉出口の温度と酸素濃度が測定でき助燃灯油の流量とロータリーバーナー用一次空気押込量に連動していて,炉内温度と燃焼用空気量が適切に保てるよう自動調整されている。
  燃焼ガスは冷却塔と洗浄塔で塔上部から吹きこまれる水酸化ナトリウム水溶液と接触し,冷却されると同時に酸性ガスの中和,ダストの除去が行われる。この洗浄塔を出た燃焼ガスは約70℃で飽和した多量の水分を含んでいるので,クーリングタワーから引きこまれる冷水と熱交換する冷却器を経て,デミスターで水滴を除去する。ここで,排ガスモニタリング装置により排ガス中のNOx,SOx,O,HCl濃度を自動連続測定したのち,温風回路の空気(炉壁で得た熱空気200〜250℃)と混合し白煙を防止して廃棄塔より放散する。
  冷却塔,洗浄塔の洗煙水は洗煙水受槽に貯められたあと,無機系廃液のプロセスにより処理する。


 
廃液処理関連用語

公 害

公害という言葉は非常に広い範囲で使用されており,使用

する状況によって,その意味に相当の差が生じている。こ

のように各人の間で公害という言葉に認識の違いがあるこ

とは多くの点で不都合が生じることになる。そこで,公害

対策基本法では公害の範囲を明確にしている。すなわち公

害とは事業活動その他,人の活動に伴って生じる,大気の

汚染,水質の汚濁,土壌の汚染,騒音,振動,地盤の沈下

,悪臭によって人の健康または生活環境に被害が生じるこ

とである。
公共用水域

河川,湖沼,港湾,沿岸海域その他公共の用に供される水

域をいう。もちろん,これらの水域に接続されている水路

も含まれるが,終末処理場を設置している下水道は除かれ

る。一方,水質汚濁防止法による排水基準は,公共用水域

に排出される水に適用される。そのため,下水道に排出さ

れている信州大学からの排水は各下水道法及び条例によ

り規制されている。
有機廃液

有機物質を主体とした廃液。有機物質と無機物質の厳密な

区別は困難であるが,一般的には一酸化炭素,炭化カルシ

ウム等の簡単な炭素化合物以外の炭素化合物を有機化合物

という。廃液処理においては有機廃液を可燃性廃液と難燃

性に分類することが多い。可燃性有機廃液は主に消防法上

の危険物第4類に該当する物質であり,点火により燃焼す

る廃液である。難燃性有機廃液はクロロホルム等のハロゲ

ンを含んだ自燃性のない廃液及び有機化合物を含有した水

溶液(例えばホルマリン等)であり燃えない廃液である。

有機廃液は熱分解により二酸化炭素,水等の無害な物質に

分解することができる。
無機廃液
重金属等の無機物質を含有した水溶液をいう。一般に無機

物質は分解しても無害な物質に変換することはできない。

つまり水銀はどの様な化学反応を使用しても水銀のままで

あり,他の無害な元素に変換することはできない。そのた

め無機廃液の処理は一般に無機物質を水に溶けないように

安定化させ除去する方法をとっている。
ハロゲン

フッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),ヨウ索(I),ア

スタチン(At)をハロゲンと呼んでいる。多量にハロゲン

元素が含まれている廃液は,焼却炉を傷めたり化学反応を

妨害したりするため処理が困難となる。
重金属

全元素の内約80%が金属である。金属は比重の差により軽

金属(比重4以下)と重金属(比重4以上)に分類される。

この分類によると,全金属の内約85%が重金属に分類され

る。廃液処理においては,排水基準が定められている重金

属(カドミウム,鉛,クロム,水銀,銅,亜鉛,鉄,マン

ガン)を含有している水溶液を,一般的に重金属廃液とし

ている。
フェライト化処理
フェライトとは鉄と他の2価の金属との複合酸化物で,スピ

ネル型立方結晶構造をもつ化合物をいう。2価以外の金属を

含んだ化合物も含めてフェライトと総称することもある。

フェライト化処理とは,反応槽中でフェライト生成反応を

行ったとき,液中に含まれている重金属がフェライト結晶

に取り込まれることを利用した処理法である。
凝集沈殿処理
重金属廃液にアルカリを添加し,pHを上げていくと重金

属水酸化物が沈殿する。このとき生成する沈殿はそのまま

では沈降性があまりよくない。鉄塩,アルミニウム塩,カ

ルシウム塩等を添加すると凝集・沈殿が促進され,固液分

離を容易に行うことが出来るようになる。廃液処理には一

般に鉄塩が使用されているが,水酸化鉄には水中に溶解し

ている物質も沈殿の中に取り込んで水中から除去する作用

(共沈作用)がある。
噴霧燃焼処理

有機廃液の焼却処理においては,有機化合物をいかに完全

燃焼させるかが課題である。噴霧燃焼法は微粒化した有機

廃液を焼却炉内に噴霧して燃焼させる方法である。
エマルション燃焼
処理
有機廃液は種類により物性や発熱量が異なる。そのため,

廃液をそのまま焼却炉内で燃焼させると燃焼状態を一定に

保つことが難しい。そこで,有機廃液を適量の水と混合さ

せ発熱量等を一定の状態にして燃焼させると安定な燃焼が

可能となる。多くの有機廃液と水とは分離してしまうが,

乳化剤を加えてかき混ぜると,有機廃液と水が均一に混ざ

り合ったエマルションができる。このエマルションを焼却

炉内に噴霧して燃焼処理する方法のことをいう。
スラッジ

一般的には泥状の物質のことを表す。無機廃液を処理す

るときに重金属を沈殿として固定し,この沈殿を水と分

離すると汚泥が発生する。廃液処理においてはこのよう

な汚泥のことをスラッジと呼んでいる。
ppm

parts per million の略。100万分の1の量を1ppmで表

す。つまり,1mg/kgが1ppmであるが,水溶液の場合,密

度が1に近いので,通常1mg/lを1ppmと表現することが

多い。同様に,1μg/lは1ppb(parts per billion)に

相当する。長野県公害の防止に関する条例による水銀の排

水基準は0.003mg/lであり,0.003ppm(3ppb)とほぼ同

じである。
排 水

排出水の短縮であり,敷地境界の外に排出する水のこと

をいう。
廃 水

使用後の使い果たされた水で,そのままでは他に使用で

きない水であり,不用または廃物となった水のこと。
廃 液

薬品の溶液の使い捨てられたもの,通常含有物質の濃度

が高いので,濃厚廃液ともいう。処理を行う水の状態に

合わせて,排水処理,廃水処理あるいは廃液処理が使い

分けられている。